行政、大学、学会を巻き込むまで

ー協議会の主体が、県庁ではなく県立病院になった具体的な理由を教えてください。
 県庁主体だと予算を前年から申請して、予算に基づいて協議会を開催しなければならず、手続きが煩雑です。当院は、山口県唯一の県立総合病院ということで、県行政と連携した計画立案と実証実験等の実施が同時にできる点と、独立行政法人化して裁量が広がったので、機動力が高い点から山口県立総合医療センターが主催することになりました。

ーメンバー構成はどのように決まっていったのでしょうか。
 まず、へき地で医療体制確保に困っている自治体に声をかけました。例えば、下関市や岩国市など、市の一部にへき地医療対象となる地域を持つ自治体に「遠隔医療に取り組みませんか」とお声がけしたんです。あとは、学術という点では山口大学医学部です。カルテやICTの部分では従来からクラウド型カルテを開発していた山口大学工学部や、きりんカルテシステム株式会社、NTTデータ経営研究所、日本マイクロソフトなどの企業も巻き込みました。予算という点で、公益社団法人地域医療振興協会という自治医大の一期生が作った組織があり、ミッションが同じですのでご賛同いただけました。
 転機になったのは、第3回協議会にて、厚労省医政局の遠隔医療担当の方に講演をいただいたことです。前述のオンライン診療の事例に関して、厚労省内部でも遠隔医療は本来へき地医療のためのものなのに、推進しきれていないという問題意識があったようです。国が興味をもってくれたことがきっかけで、三重県、佐賀県、神戸大学など他県の参加者や、日本遠隔医療学会、日本プライマリ・ケア連合学会などの学会関連の方の参加者が増えていきました。

 山口県へき地遠隔医療推進協議会パンフレットより抜粋

協議会運営の工夫

ー協議会の運営で苦労したこと、気をつけたことなどありますか。
 予算があまりなかったので、参加いただいているメンバーがボランティアになってしまっています。思いがある人が集まったという点はプラスに働きましたが、やはり持続可能性が課題です。その代わり、意識をしているのは、みなさんの発言する機会、情報発信する機会をできるだけ作って、参加する意義を感じていただきやすいようにしています。
 最近は、取り組んだことを、逐次、綺麗にパンフレットにまとめてPDFでオンラインに掲載しています。パンフレットを作っていると、外部に説明しやすく、これが厚労省を含む多くの方を巻き込むことに成功した要因の一つだと思っています。

ー予算が少ない中でのパンフレット作成は、どのように工夫しているのですか?
 パンフ作成は、実は息子のパパ友で、地元の有名スポーツチームのパンフレットなども手がけているデザイン会社の方に出会ったんです。医療業界は実績がないということで、お友達価格でやっていただけました(笑)。医療業界を知らない方が作ってくださっているので、逆に広く誰でも分かるような表現になって良かったと感じています。

山口県へき地遠隔医療推進協議会を運営してみてどんな効果を感じられましたか?
 一番大きいことは、厚労省の科研費に繋がったことです。これで社会的信頼を得ることができたので、県庁や各自治体も協力的になって4箇所(※2)でオンライン診療の実証実験をできていることです。また、別枠で県庁の5G活用の実証実験として「へき地医療支援」で声がかかるなど、いろんなことに繋がっています。協議会を始めて、あらゆる立場の方と出会えて、他県の方、IT企業の方とのつながりで、お互い視察したり、これから他のプロジェクトにも繋がりそうな期待を持っています。

ー官民連携+医工連携で「へき地医療支援」に取り組む貴重な事例をお聞かせいただけました。ありがとうございました。

※2
現在取り組んでいるオンライン診療の実証実験は以下の4つ。
①巡回診療:萩市相島地区、山口市柚木地区
②医師派遣(非常勤医師+常勤看護師):周南市鹿野診療所
③医師派遣(非常勤医師+非常勤看護師):岩国市柱島
④へき地診療所(常勤医):岩国市本郷診療所

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