救急AI相談とは?どこがAIなのか 

 「チャットボット」とは「チャット」と「ボット(ロボットの略)」を組み合わせた造語で、自動会話プログラムのことを指します。今回の計画では、従来の電話による救急相談に加え、AIを活用したチャットボットでの自動応答サービスを提供し、チャット形式での相談を可能にしました。
 埼玉県AI救急相談のウェブページから、(1)相談の対象者、(2)対象者の年齢、(3)対象者の性別は、(4)対象者の住所は、(5)症状の入力は、発熱、腹痛、頭痛、吐き気・吐いた、ケガは選択ボタンで対応となりますが、それ以外の症状または症状がいくつもある場合には、自分で症状を入力する自由記述ボタンを選択します。自由記述を選択した際には、表示された部分に文章文字を入力します。入力が終了した時点で、チャットボットが対応し返信が返ってきます。何回かのやり取りの後、返信に対して考えられる症状が示されます(図1)。

図1

 チャットボットに入力された文字や文章に対して、表記のゆれ、文脈などを総合的に判断して考えられるいくつかの症状をAIが羅列をして表示しまします。ここで示される症状は、AIシステムの解析により最も可能性の高いものが最上段に示され、ある一定基準を変えたものまでが表示されます。図1において示された症状は、熱中症と高血圧と失神でしたが、その一つ一つを症状別テーブルと呼びます。症状別テーブルが出現するまでの過程には、チャットボット部分とAI処理部分と症状別テーブル部分に分かれ、そのうちAIは、前者ふたつの部分が関連しています。文字入力された文章は、テキスト含意認識により症状別テーブルのいずれかに分類されます。テキスト含意認識では、入力された文章に対して言葉として意味を持つ最終単位である形態素に区切り、形態素の品詞や原型の情報を決定します。標準辞書とユーザ単語辞書からなる形態素辞書により可能な形態素分割のパタンをすべて求めます。各分割パタンに対して分割の尤もらしさ(自然さ)から、最良の分割パタンを探索します。その後、単語被覆率による意味の近さを判定します。質問文がすべての症状別テーブルに存在する開始発話にどれだけ関係しているかを判定します。開始発話とは、症状別テーブルを関連させる症状や訴えをまとめた50~60の言葉の集まりです。さらには、同義表現、不要な表現の排除、不定表現の判定、反義表現の判定などを行います。例えば、おとなの症状別テーブルの「息が苦しい」には、「息苦しい」「息が荒い」「はあはあしている」「ハアハアしている」などの62の文章や言葉が、ひらがな、漢字、カタカナなどで「息が苦しい」を想起させるような会話発語として登録されています。この開始発話は、それぞれの症状別テーブルにおいて、想起させるような文章や言葉がそれぞれ別々に登録されています。この開始発話は、埼玉県救急電話相談の電話相談員を中心に検討され、最終的に埼玉県救急電話相談事業運営協議会および有識者の意見を含めて決定されました。文字入力された瞬間に、それぞれの開始発話すべてが照らしあわされる作業が行われることとなります。相談者が入力して1秒以内にテキスト含意認識技術により症状がリストアップされます(図2)。

図2

AI救急相談の開設は救急現場の負担軽減につながるのだろうか

 2019年7月19日15時から12月31日までの運用に関しては、利用規約に同意し相談を開始した件数は全体で11523件、1日71.1件でした。女性の利用者がやや多く、5959件(52%)を占めていました。相談の対象者は、1歳までが2217件(19%)と最も多く、30歳代が1941件(%)、20歳代が1868件(16%)でした。相談の時間帯は、19時から21時の時間帯が最も多く認められました(図3)。



地域別では、埼玉県の63市町村のすべてから相談があり、そのうち人口の多いさいたま市、川口市、川越市、春日部市より約45%の相談を認めました。大規模の利用者アンケートを行う予定ですが、県民からは、「電話より気軽に使えるので助かる」、「とても役に立ちました」、「症状に応じたアドバイスがあるので不安が軽減された」といった温かい言葉が寄せられました。こうした試みがすぐに救急現場における負担軽減につながるかどうかは不明です。しかしながら、AI救急相談を県民に上手に利用していただければ、救急車の適正な利用が普及し、夜間休日の救急において適切な医療が展開される可能性が高いでしょう。今後は一定の使用実績を確保できている現状で、使用調査や県全体の満足度調査などを行っていきたいと考えています。AI救急相談は、救急電話相談機能を補える手段として、これからの埼玉県全体の救急医療の発展に役立つものと確信しています。

※本記事は「月刊新医療2020年8月号」に掲載された原稿を一部改変して掲載しております。

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