日常業務の中でプレホスピタルのデータ統合が行われることは病院経営面でも多大なメリットがあります。実際のNEXT Stage ERの画面を下記に示しますが、業務運用されている病院では煩雑な集計業務を伴うことなく、救急車のお断り理由の集計と対策が容易になります。

救急車に加えて、walk inの電話対応内容の見える化、患者紹介の傾向解析も可能で、NEXT Stage ERの利用病院である栃木県の自治医科大学附属病院の救急外来では、全ての時間外の紹介・事前電話連絡をNEXT Stage ERを用いてデータ化し、救急外来部門の経営解析の一助とする体制を構築しています。

2)集計・研究

臨床研究でのデータ集計

医療情報の集計に際して、電子カルテでは限界があります。臨床研究者の視点からすると、特定の疾患の患者の一覧を医療情報部に依頼した際に、いわゆる「保険病名」をもとに抽出した患者一覧が出てきた時ほどゲンナリする瞬間はありません。

色々な意見があるのは承知の上で敢えて断言しますが、電子カルテの「保険病名」は医師・研究者の求める「臨床病名」とは大きな乖離があります。例えば、DPC病名としての「敗血症」は診療報酬点数が高いため、しばしばつけられますが、この際の「敗血症」の定義はどのように判断されているでしょうか?バイタルサインや血液検査データの情報を見ることができない「敗血症」病名は研究目的では信頼に値しません。さらに、「敗血症」患者で「使用した抗生剤」はレセプトデータ等からわかりますが、肝心の「感染巣」に関しては保険病名等の支払いデータからたどることは絶望的に困難です。(肺炎だろうが尿路感染だろうがDPCの点数に影響しないから、きちんと付けられている保証はどこにもありません。)

ここを解決するために、いわゆる教育病院の救急外来ではほぼ100%、FileMakerなどで構築された救急症例台帳があります。従来の電子カルテでこの症例台帳ニーズがカバーされていないからこそ、電子カルテの普及率が9割を超えている大病院セグメントでも未だにFileMakerの症例台帳は現役です。この症例台帳は、「医師が手動で患者登録を行い、カルテのテキスト部分を見て患者の診断名・バイタルサイン・既往症などを入力」するというオペレーションで構築されます。NEXT Stage ERはカルテ記載支援の機能を持つ部門システムですが、第一の目的は臨床情報の蓄積です。導入病院では、既存のFileMakerの症例台帳にNEXT Stage ERから情報を送り込む形で、これまでの症例台帳のデータの連続性を保ったまま、効率的に症例データベースを構築することができます。

臨床データ集計の経営価値

NEXT Stage ERは直接診療報酬に関わる部分を触らないため、経営メリットが乏しいと思われがちですが、それは間違いです。まず、昨今の診療報酬改定は、集中治療室のSOFAスコアの記載や、救急管理加算の厳格化に関わるバイタルサイン等重症度の記載など、「診療報酬計上の根拠となる臨床データ」の記載をますます求められています。急性期医療ではおそらくこの流れは今後も加速し、病名登録をするだけではない、詳細な臨床データの記載はますます求められると考えられます。この流れに対して、入力業務の省力化・自動化は当然期待されるところですが、基本的なバイタルサイン情報でさえ、電子カルテではベンダー毎、場合によっては病院毎で異なるテーブルに格納されているのが実情です。「臨床情報を正規化する機能を持たない」電子カルテでは自動化困難なこのような臨床データの記載業務も、NEXT Stage ERを用いれば容易に自動化可能です。

後編では「電子カルテでカバーできない救急外来業務の3つの業務要素」の「AI入力支援」について記述していきます。

※本記事は「月刊新医療」2020年7月20日号を一部改変して掲載しています。

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