ー今までやってきた取り組みの中で、苦労とか、ありましたら教えてください。
 苦労というのは…、たくさんあります。毎朝6時には病院行って、尿検体を集めて、それを移し替えて保存して、超音波で筋肉を測って、日中は実際にリハビリしたりとか、臨床も関わって、論文まとめてると、やりがいを感じているので出来ますが、やっぱり時間的・体力的には大変ではあります。継続的にその人がどうなっていくかを見てるので、旅行も行けないですし、仕事ばっかりの生活になっていることは確かです。
 あと、最初の方は、周囲に全然理解してもらえなくて、そもそも、足とか腕とか見て「あいつ、何測ってるんやろ?」「PICC (末梢留置型中心静脈カテーテル) 入れるんですか?点滴入れるんですか?」みたいな反応なんで、「筋肉見てます」という風には普通は思わないですよね。また、ICUという生きるか死ぬかみたいな時に、患者さんやご家族に同意を取ったりするのも理解を得られるのが難しいこともあるし、医療従事者からも「何で筋肉測ってるんだ」と怒られたこともありました。でも、これをやることが、その人の10年後、20年後、凄く大事な事になってくると信じて、その評価することが必要なんだと思って、理解を得られなくても「今日1日だけ頑張ろう」と思って、夜になると毎晩お酒飲んで「明日だけは頑張ろう」ぐらいな感じで何年もやってきました。

ー2020年はクラウドファンディングをやって飛躍されて、周囲の反応は変わりましたか?
 変わりました。「君はなんて素晴らしいを事してるんだ」と、急に言われるようになりました(笑)。筋肉を測る時は、患者さんに真っ直ぐになってもらわないといけないんですが、今まで自分で真っ直ぐにして整えてましたが、看護師さんが手伝ってくれるようになったりしました。クラウドファンディングの大きな利点として、重症患者さんの社会復帰に向けた活動を知ってもらうことができて、非常に有難いと思ってます。

将来への展望

ー少し話がそれますが、社会全体として、社会復帰までを課題として捉えて、目を向けてくれる人が増えるにはどうしたら良いと思いますか?
 やっぱり事実を知ってもらうっていうのは大きいと思います。今の新型コロナみたいに、「コロナなんかただの風邪だ」とやっぱり言う人も多いし、データを出していかない事にはイメージがしにくいと思います。それと同じで、ICU-AWから患者さんの社会復帰まで、どれぐらい苦労しているのか、助かったのは良いんですけど、やっぱり苦しんでいる方々がいるという現状を広く知ってもらうことです。これは医師だけの話ではなくて、栄養士さん、医学療法士さん、介護士さんとか、地域の方達の支えも要りますし、社会一丸となってそういう人を如何に社会に戻していくかということを考えなければなりません。今はまだ一部の人が知ってるだけですので、それを多くの人に知ってもらう活動をしていく必要があるかなとは思ってます。

ー将来の展望をお聞かせください。
(臨床・研究・教育を兼ね備えたラボ

 今はまだ仲間が少ないですが、長期的な目標としては、ICU後の社会復帰に向けた、筋萎縮の臨床研究と基礎研究、また臨床・教育・研究も兼ねた仲間を増やしていきたいです。
 そういったことから、その分子に対する研究、基礎研究もしたいなと今は思っています。臨床研究だと、どうしても違う疾患の方が含まれてるので、治療の効果を検証できないこともよくあります。例えば、筋肉中のタイチンが壊れる過程への治療薬を作っても、いきなり人で試すわけには勿論いかないですし、僕がしてた事は、超音波で筋力を測って尿の物質を測った、それだけです。もっとサイエンティフィックに実際にマウス使うところから立証していきたいです。ただ、今は自分が基礎研究をそんなに出来る訳ではないので、他の研究室で学ばせてもらって、筋委縮ゼロプロジェクトで、より基礎にも迫ることをやりたいと思っています。そこで明らかにした事が、10年後、20年後、100年後、色んなことの役に立ってくると思います。時間が掛かるかもしれませんが、最終的には筋委縮に関わるラボを立ち上げることが目標です。
 また、筋肉の委縮をより正確に評価するという研究も必要だと思っています。恐らく今後、超音波による測定はスタンダードな1つになると思っています。これを普及させるために考えていることは、オンラインで全国のみなさんに講習会を開催する事など構想しています。例えば理学療法士さん、栄養士さんも、超音波を使えますので、講習会をすれば使うこともできるようになります。超音波を使って全国で筋肉の評価をしっかり出来るような教り組みはやっていきたいと思っています。
 僕は、死ぬまでこのプロジェクトに関わっていくと思っているので、まだ医師8年目であるというメリットを生かして、腰を据えて時間を掛けて、長期的なプランでやっていくつもりです。

(海外との交流・発信)
 あとは、まだ本当に妄想ですけど、世界を巻き込みたいと思っています。世界との繋がりは、やっぱり他の国に比べて、日本は圧倒的に弱いところがあると思うんです。海外の学会に行っても日本人は日本人で集まったりとか。日本は島国にしかすぎなくて、僕は、そのさらに島国の四国・徳島にいるので特に思うのかもしれませんが、今の僕の世代は島国からでもブロードバンドで繋がれるという感覚を持っていると思います。別に世界で有名になりたいとかではなくて、世界規模に繋がって一緒に研究・交流・発信をしていく、高め合うということが、感覚的に視野に入っている世代だと思っています

ー本日は貴重なお話ありがとうございました。

参考文献

  1. Nobuto N, Rie T, Kanako H,et al.Urinary Titin Is a Novel Biomarker for Muscle Atrophy in Nonsurgical Critically Ill Patients: A Two-Center, Prospective Observational Study.Crit Care Med. 2020 Sep;48(9):1327-1333. doi: 10.1097/CCM.0000000000004486.
  2. Jack EZ, Andrew AK, William AK.Changes in hospital mortality for United States intensive care unit admissions from 1988 to 2012.Crit Care.2013 Apr 27;17(2):R81. doi: 10.1186/cc12695.
  3. Nobuto N,Jun O,Rie T,et al. Upper and lower limb muscle atrophy in critically ill patients: an observational ultrasonography study.Intensive Care Med. 2018; 44(2): 263–264.
  4. Manabu I, Nobuto N, Rie T,et al.Elevated Urinary Titin and its Associated Clinical Outcomes after Acute Stroke.J Stroke Cerebrovasc Dis.2020 Dec 23;30(3):105561. doi: 10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2020.105561. Online ahead of print.

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