今後どんな研究を目指すのか

【後藤】先生はこれからどんな研究目指すの?
【松山】うーん、僕は機械学習とかには行かなかったんですよね。どっちかというと、パラダイムシフトを起こすような研究がしたくて。例えば石見先生がchest compression only CPRで一躍名前上げたみたいな感じで、そういうところにはやっぱり興味はありますよね。例えばNIRSでもやってることがあって、心臓マッサージして2分たったら、10秒以内にパルスチェックしなさいってあるじゃないですか。でも、あれはパルスチェックしている間に脳のサチュレーション落ちちゃうんですよね(機械を信用すれば)。脳のサチュレーションと言われる値が上がっていく人はROSCするのは間違いないというか。
【後藤】その辺はどうなの、結構論文出てるの?
【松山】結構出てますね。最初に見つけて流行らせたのも日本人だったんですけど、やっぱり海外はそれは面白いと思った時の速さが違って、もうRCTまで持っていっているので、今はもうニルスガイドでやりますみたいのがドイツから出ていたりしています。

【後藤】海外はそういうの本当にはやいよね。日本もそういう土壌になるといいね。先生は蘇生で色々論文書いているけど思い入れのある論文ってある?
【松山】そうですね、JACCのやつは方法論で時流に乗った二番煎じ三番煎じという感じだったんで…まあ嬉しいですけど笑。BMJに載った論文を元にして気道管理の研究をしたのがピッツバーグにいる大久保先生のResuscitationの論文で、僕は小児のアドレナリンでやったんですけど、Circulation, EHJと出して蹴られたからJACCだしたら通ったみたいな感じです。
【後藤】最近Circulationにも論文通してたね。
【松山】Circulationの論文はECPRのやつですね。ECPRの導入までのフロータイムで蘇生中のものをローフロータイムと言うんですけど、それは波形によって効果が違うんじゃないかっていう論文です。まあ当たり前なんですけど、今まではECPRを何分以内に入れるという話だけで、波形によって全然違いますよっていうエビデンスがなかったんです。普通に考えて、「一様に時間だけを目安にしてECPRに入れなさいというのは間違いでしょ」「若くてVFで生き生きしてたら、まだ持つでしょ」みたいなことを示したくて250人のデータで研究しました。最初は波形と年齢でinteractionがあるといった点を示してfull articleで出したら、research letterだったら通しますよみたいな感じでエディターから連絡が来たので、本当はあった年齢の影響が本文からは消えちゃったんですよね。年齢が高くても早く入れている群は社会復帰しているので、年齢一様にいったらあかんよというメッセージが書いてあって、でもやっぱりリミットは年齢によって違いますよみたいな話があって。書いてて面白いと思ったんですよね。
【後藤】論文は書いてて面白いかどうかは大事よね。やらされた研究の論文は面白くないしね笑。
【松山】あんまり誰も期待してなかったんですけど、ICMに出して、速攻エディターキックを食らってしまって、それでも僕は面白いと思うので「Circulationに出して良いですか?」と指導者の北村先生に相談してみたら、「まぁ無理かもしれないと思うけど出すか」と言ってくれて出しました。そしたらものすごい好意的な返事が返ってきて、そのあとエディターから直接連絡来て、これ変えてくれたら僕頑張って通してあげるから頑張ってリサーチレターで出してくれっていうメールも来たりして。
【後藤】すごいね、そんなの来るんだ。
【松山】そんなのは、北村先生も初めてだと言ってました。これは絶対通ると思うから頑張ろうといって、research letterにしたという経緯もありました。やっぱりJACCの論文は日本人がウツタイン使った研究という既存パターンだったんだけれど、Circulationの論文は北村先生とかはすごい喜んでくれましたね、自分が一から作ったデータベースなので。
【後藤】そうだよね、絶対そうだと思うんだよ。誰かが集めてくれた既存のデータで論文書いてると乗っかってる感じがずっとあるからね、自分の力じゃないみたいなところがあると思う。
【松山】保険請求データを用いた研究とかもそういう部類になりますかね。
【後藤】うーん、保険請求データだとDPCとかNDBが有名だよね。保険請求データは重要なんだけど長期的にずっと保険請求データを扱うのか?という問題はあるんじゃないかな。僕は東大で一緒に論文書いてた研究者にも話をしたことあるんだけど、DPCを扱ってる人達はずっとDPCを突き詰めていくのかなって。もちろんDPCデータそのものは魅力的かつ重要なデータだからちゃんと扱える人や指導できる人が大事なのは当然なんだけど、ある程度経験を積んでからDPCでやれる事をやったら、次JMDC、次MDVってずっとデータベースを探す旅に出るだけにならないといいなって。これ僕がアメリカ留学したときメンターの長谷川先生にめちゃくちゃ言われたんだけど、留学中にプロジェクトやデータベース作らなかったことだけは今でも後悔してるかな。
【松山】そうなんですよね。だから今自分は、既存データベース研究以外にさっき言った個別化の心肺蘇生でインパクトのある研究したいなと思っています。もちろんちょっと、後藤先生がやっているような機械学習とかも勉強したいなという思いはあります。

(続く)

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