TXP Medical株式会社は、2020年11月19日「第48回日本救急医学会総会・学術集会GIFU2020」にてランチョンセミナーを開催致しました。NEXT Stage ERを導入いただいている病院での事例について、ご発表いただきました。本稿では、各演者の先生方の発表概要をご紹介します。

登壇者

座長
筑波大学医学医療系 救急・集中治療医学 教授 井上 貴昭先生

演題①「地域救急医療でのNEXT Stage ER、プレホスピタルでの利用可能性 」
徳島県立中央病院 外科副部長/救急救命センター 副センター長 川下陽一郎先生

演題②「済生会宇都宮病院ドクターカー:拠点間広域連携を見据えた情報共有システムの構築」
済生会宇都宮病院 栃木県救命救急センター 藤田健亮先生

演題③「至適院内データプラットフォーム構築×臨床研究」
日立総合病院 救命救急センター長 中村 謙介先生

演題①:地域救急医療でのNEXT Stage ER、プレホスピタルでの利用可能性

講演概要:徳島県立中央病院 外科副部長/救急救命センター 副センター長 川下陽一郎先生
  • ローカル救急病院でNEXT Stage ERを導入した事例:2019年9月に導入。
  • 院内での活用状況:ベッドコントロール&院内掲示板として利用。パソコンだけでなく、タブレッド+手書き入力アプリを利用し、紙入力のように感覚的に使えて、紙よりも入力も早くさらにリアルタイム共有も可能。情報共有はICU・HCUやオペ室にも送り、素早く事前準備に取りかかれる運用を構築した。
  • 病院前診療での活用状況:ドクターカー、ドクターヘリにおいて、処置記録アプリを利用して、ハンズフリー(完全に両手を空ける)情報入力を実現している。具体的には、スマホをチェストハーネスで固定+ワイヤレスイヤホン(+必要に応じてGoPro Hero8 Black)を装備して現地に向かっている。ER側に写真等を含めてリアルタイムに情報伝達し、ER側では現地の様子が臨場感をもってわかるような運用を実現している。
  • システム導入前と比べて、到着から手術までの時間や、全体生存率は改善傾向にある。

演題②:済生会宇都宮病院ドクターカー:拠点間広域連携を見据えた情報共有システムの構築

講演概要:済生会宇都宮病院 栃木県救命救急センター 藤田健亮先生
  • 栃木県救命救急センターでは創設以来、将来的にPrehospital ECPRや外傷に対する積極的な介入を視野に入れたPrehospital(従来のドクターカー)とECMOセンターとしての重症呼吸循環不全患者の集約化およびTransport事業を両立することを目標としている。今年、U-CCETT “Utsunomiya Critical Care & ECMO Transport Team”を立ち上げ、移動型救命救急センターというコンセプトのもと、消防要請によるワーキングステーション型ドクターカーを運用している。
  • 院内のドクターカー記録は、一定の職種に偏った負担が出ないように各職種ごとに入力エリアを色分けして運用中。
  • 処置記録に関してはNEXT Stage ERのドクターカーアプリを用いて、特に看護師に記入責任のある処置記録をドクターカー内で行う際に利用している。汎用処置の一覧から、行った処置をクリックするだけで、時間も同時に記録されるため、多忙な中でもリアルタイムな記録が可能。
  • これらのシステムを用いることで、現在、拠点間広域連携を構想している。一施設ではなく医療圏としてデータベース構築、また拠点間広域連携により医療圏を超えたデータベース構築を可能とし、医療の質向上、重症患者の集約を目指している。

演題③:至適院内データプラットフォーム構築×臨床研究

講演概要:日立総合病院 救命救急センター長 中村 謙介先生
  • 医療の役割と目標で「臨床」「教育」「研究」の両立がなかなか難しい。
  • 研究において、RCT研究、多施設やDPCを組み合わせた観察研究はハードルが高い。NEXT Stage ERの導入によって、データを蓄積し一括自動抽出できるので、単一観察研究でもnを稼ぐことができる。
  • 日立総合病院の単施設自動抽出で、約5000人の患者に対してPIIS病態解析を行う研究ができた。
  • Protein for Critical Care(1.8g/kg/day vs 0.9g/kg/day)のRCTも行うことができた。臨床のフローを邪魔しない研究登録・無作為化のワークフローが必要。